安全衛生における「事業場」とはどこまでの範囲を言うのでしょうか?
正しく認識していないと違法な体制と見なされますので、しっかり押さえておきましょう。
本記事では事業場の定義について解説します。
こんな人に読んでほしい記事です。
- 事業場の範囲がわからず必要な体制が組めない
- 自社に事業場と呼ぶべきなのかわからない場所がある
- これって事業場なの?と聞かれた時にはっきり答えたい
事業場を正しく認識すべき重要な理由
安全衛生に関する対応をする中で、よく耳にする「事業場」と言う言葉。
正しく認識できていますか?
労働安全衛生法では、事業場を単位として、その業種、規模等に応じて安全衛生管理体制、工事計画の届け出等の規定を適用します。
事業所ごとに必要1 管理者の選任
従業員が50人以上の事業場では、事業場ごとに、下記の各級管理者の選任をしなくてはなりません。
総括安全衛生管理者 ▶︎参考:総括安全衛生管理者とは?わかりやすく解説!
安全管理者
衛生管理者
安全衛生推進者
衛生推進者
産業医
健康管理等に関する努力義務
作業主任者
規模、業種に関係なく労働安全衛生法施行令6条に掲げる作業がある場合
衛生管理者が事業場Aにはいるけど、事業場Bにはいないってのはだめ!
事業場ご・と・に!
事業所ごとに必要2 委員会の設置
安全委員会、衛生委員会、安全衛生委員会の設置は事業所ごとに必要です。
各種委員会に関する説明はこちら
委員会は50人以上の事業場が対象ですが、50人未満の事業場であっても、安全または衛生に関して、労働者の意見を聞く場を設ける必要があります(努力義務)。
事業場の定義とは
事業場の基本的な考え方
事業場とは同じ場所で相関連する組織的のもとに継続的な作業をする場所を言います。
例えば、工場、事務所、店舗などが単位となります。
こちらの図のように、「同じ場所」がポイントですので、同じ会社の運営であっても、別の場所にあれば、別の事業場となるわけです。
衛生管理者、労働者死傷病報告書、健康診断報告書などは、事業場単位で届け出る必要があるということですね。
具体的な例でいうと、本社(50人程度所属)とそこから数km離れた場所にある工場(20人程度所属)と合わせて、1つの事業場とみて、健康診断報告書を届け出る。これはNGなのです。
この場合、本社と工場は別で健康診断報告書を提出しなければなりません。
面倒だけど、異なる事業場の届出や報告は別々!
例外1 同一場所であっても一つの事業場ではないケース
同じ場所であっても、そこで行われる労働内容がかなり異なる部門が存在する場合は、その部門を切り離して別個の事業場とする必要があります。
例えば、
・カーディーラーに付属する自動車整備工場(自動車の販売と整備)
・学校に附置された給食場(児童教育と食品加工)
といった感じです。付属施設が何をどのような組織で行っているか、これが異なれば別個の事業場です。
なぜ別にされるのかというと、これも労働者の安全を守るためです。
労働内容がかなり異なる場合は、安全衛生管理体制にも違いが出てくるはずです。
労働者の安全を守る法律を適正に運用できるよう、分けてしっかり管理しましょうということですね。
例外2 場所が離れていても同一の事業場となるケース
かなり小規模な場合は、独立した事業場とはせず、直近上位の機構と一括して一つの事業場とします。
つまり、出張所や支所など、規模的にかなり小さく、組織的関連性や事務的能力等もさほどないと見なされる場合です。
組織というほどの人数がいない、同じ場所で継続的に行われる作業がない、そんな場合は独立した単位で管理体制を引く必要はないという考え方なのです。
番外編:事業場の読み方はじぎょうじょう?じぎょうば?
事業場の場って「じょう」?「ば」?迷ったことはありませんか?
結論、どちらも正解です。
ただし、慣例的に音読みの方が規模が大きい場合に使用され、訓読みは規模が小さい時に使用されることが多いです。
例えば、工場(こうじょう)と工場(こうば)で読み分けた場合、前者が大きく、後者が小さく感じますよね?
広さや人数の基準があるわけではないので、さほど気にする必要はありませんが、「じぎょうじょう」の方が一般的です。
うむ。個人的にはやっぱり「じぎょうじょう」だな。
まとめ
労働安全衛生法の適用単位である事業場、正しくご理解いただけたでしょうか。
何人で何平米でこれがあったら事業場だという基準があるわけではなく、あくまでも実態に即して判断されます。
場所と労働内容が同じか否かで、今一度、自社の各拠点を見直してみるといいですね。
どうしても判断が難しい場合は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に問い合わせてみましょう。
とにかく場所と労働内容が違うのに合理的な理由なくひとまとめにするのは、違法と見なされますので、横着は禁物ですよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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